中耳炎について
耳が痛いと言うと誰しもが真っ先に考えるのは、中耳炎になってはいないかと言うことでしょう。そして、この中耳炎は、耳に水が入って起こると勘違いしている方も多いようです。
急性中耳炎とはどんな病気で、どのようにして起こるか、また、どんな点に注意して治療を受けたらいいのかについて説明いたします。
急性中耳炎とは?
鼻腔と中耳とを通じてる「耳管」は、鼓膜を境にした内側の中耳と外側の外耳道の気圧差がなくなるように調節したり、中耳内の分泌物を排泄したりする働きをしています。
風邪などで鼻や咽に炎症を起こすと、この「耳管」を通って細菌が中耳に入り感染を起こします。鼓膜が正常であれば耳の外から水等が入っても中耳炎になることはありません。
症状について
まず耳管に細菌が侵入します。すると、耳管粘膜の分泌が盛んになり、耳管は粘液でふさがった状態になります。更に細菌が奥へ侵入すると、鼓室内壁の粘膜でも分泌が増えて、炎症が始まります。しかし、この時すでに耳管はふさがった状態になっているため、分泌物は排泄されず、鼓室内にどんどん溜まっていきます。
その炎症は中耳側の鼓膜組織にも及び、毛細血管の血流が盛んになるため外部からのぞくと、鼓膜は赤く腫れて見えます。
やがて鼓室内に分泌物が充満すると、難聴や圧迫感による耳痛が強まります。これを放置すると、鼓膜が壊死を起こして穴があき、ついに充満していた分泌物が外耳道へ流れだし、耳たぶからたれるようになります。これを耳漏(耳だれ)と言います。耳漏が始まると、耳の圧迫感が解消されるため一応、耳漏は治まります。しかし、これは決して治ったからではなく、むしろ耳漏が続くうちは、病気は進行していると考えてください。
[その他の症状]
- 耳が詰まった感じ
- 耳の中で音がする
- 熱が出ることもある
[注意点]
痛みがとれても医師の指示を受けて治療しましょう。特に鼻水が出たり、のどや鼻の炎症が続いていると治りが悪くなります。
治療が不十分だと症状が長引いたり、反復したりすると、やがて慢性中耳炎に移行したり、滲出性中耳炎になるので、治療を勝手に中断しないでください。
治療について
治療は主に抗生物質が用いられますが、そのほか、のどや鼻の炎症に対する治療も併せて行います。この部分の炎症が中耳炎の原因となっているからです。のどや鼻の治療をすることで中耳炎が治ることもよくみられます。
鼓膜切開をするのは何故?
耳痛が強いときや、熱が続くとき、耳閉感や難聴がとれない時は鼓膜切開をします。これは、発熱や耳痛を和らげるとともに、滲出性中耳炎になるのを予防するためです。
鼓膜切開をしても、のどや鼻の治療は引き続き行います。
[注意点]
発熱・耳痛は治療によって比較的早く消失しますが、耳閉感や難聴はしばらく残ることもまれにあります。これは中耳腔に溜まっている膿や粘液が粘っこくなっていたり、中耳や耳管、さらにのどの粘膜の炎症が残っていて、中耳に溜まっている膿や粘液が排出されにくくなっているからです。
痛みや熱がなくなったからと言って治療は中断しないでください。滲出性中耳炎に移行することがありますので注意が必要です。
医師からのアドバイス
中耳炎が治りにくいときは?
- 小さい子供ほど治りにくい。(生後数ケ月の間はなりにくい傾向がありますが、この時期から中耳炎を起こす子供の中には何年も完治しないことがあります。特に生後6ケ月から2~3歳までは治りにくい傾向があります。また、3~7歳頃は滲出性中耳炎になりやすい時期です)
- アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)があって、いつも鼻がぐずぐずしていたりつまったりしている時。
- 体質的に風邪をひきやすい、あるいは住環境や保育園や人ごみにいることが多いなど、風邪を引きやすい生活環境である場合。
- 扁桃腺やアデノイドが大きい子供。
- 生活が不規則であったり、疲れがたまっている、睡眠不足、ストレスがたまっているなど体調が悪い時。
- 風邪を甘く見て十分な手当て、養生をしない場合。
当てはまるものが多いほど治りにくいと言えるでしょう。これらのことに注意し医師の指示を守って、早く中耳炎を治しましょう。
夜間に発症することが多いのが特徴です
風邪をひいていたり、風邪気味のお子さんが耳を痛がったら急性中耳炎が疑われます。
このような症状を訴えた場合は、自宅に鎮痛剤をお持ちの方は服用(座薬の場合はお尻から挿入)し、耳の後ろを冷やしてあげてください。手持ちの薬がない場合は、市販の小児用バファリンを飲ませてあげてください。
それで痛みがおさまれば、そのまま寝かせて、翌朝耳鼻科を受診してください。